歯の根元の歯肉、「歯ぐき」という言葉のほうがなじみがあるかもしれませんね。
ご存知の通り、歯肉は腫れたり炎症が起きたりすることがあります。
見た目だけだとなかなか分かりにくく、『私は大丈夫!」と思っている人でも歯肉が腫れている人はとても多いです。
例えば、歯磨きの時に血が出ることはありませんか?
出血がある時はだいたい歯肉が腫れている時です。
歯肉が腫れる原因・予防法、腫れた時の対処法をお伝えします。
概要
歯肉の腫れは放っておけない!
歯肉が腫れているといっても状況はさまざまですが、基本的には細菌が原因となります。
そして同じように腫れている場合でも痛みが出る場合と出ない場合、他には膿が出る場合もあります。
例えば歯周病の初期段階では歯肉は腫れても痛みが出ることはほとんどないので気付かないことも多いですが、親知らずの歯肉が腫れるという時は急性的に痛みが出ることがあります。
痛みがあるから状態はひどい、痛みがなければ放っておいていい、ということはなく、痛みが出なくても放っておくとのちのち歯を抜かなければならないなど大変になる場合があります。
歯肉が腫れるということは、自身の身体が『異常があるよ!』ということを知らせてくれているのです。自分自身でそのサインを見落としてしまうのはとても残念ですよね。
今回はそんな、歯肉が腫れる原因、歯肉が腫れる前の予防や腫れた時の対処法をお話していきたいと思います。
歯が腫れるということはどういうことなのかしっかり理解して、腫れないようにしっかり予防し、腫れてもそれ以上進行しないように自分のお口のなかを管理していきましょう。
歯肉が腫れる5つの原因
歯肉の腫れる原因について説明していきます。
最初にお伝えしておくと、ここの5つ目の原因以外は歯医者にしか治せませんのでご注意ください。
1.歯周病で腫れる場合
日本の成人では80%の人がなっていると言われている歯周病。
なので、歯周病により歯肉が腫れている人はとても多いと思います。
これになってしまう元々の原因は、歯磨きがしっかりできていなくてお口の中に細菌が残ってしまうことです。
歯周病は重度になってくると歯がグラグラしたり抜けたりしてしまう怖い病気なのですが、初期症状では歯肉が腫れるくらいでほとんど痛みが出ません。もし歯肉が少し腫れたくらいの段階で歯周病に気づけたなら、歯周病が原因で歯を抜かなければならない事態を未然に防げるってことですね!
日本では定期検診があまり認知されていないため定期的にクリーニングやブラッシング指導を受けるという人が少ないです。そのため歯周病の人の割合が多いのかもしれません。最近検診に行っていなければ、その期間で歯周病が進行している可能性もあります。定期的に診てもらって、良い状態をキープしていきましょう。
2.親知らずが腫れる場合
親知らずは歯の並びの一番奥に生えてくるため歯ブラシがしっかり届かず、汚れや細菌がしっかり取り除けないことが多いです。
特に下の親知らずは横や斜めから生えてくることが多いので、手前にある歯との間にポケットという隙間ができ、そのポケットの中に汚れや細菌が入ってしまいやすくなり、これは歯ブラシで取り除くことは至難の業です。
ポケットに汚れや細菌が入ることにより歯肉が腫れやすくなります。
あまり痛みは出ませんが、身体の抵抗力がなくなると痛みが出やすい場合が多いです。
3.根尖病巣(こんせんびょうそう)があり腫れる場合
根尖病巣という言葉をあまり聞いたことがないかもしれません。
根尖病巣は神経が死んでしまった歯や、神経を取る治療をした歯にできるもので、なんらかの理由で神経を取った通路に細菌が入り感染して、歯の根っこの先に膿が溜まることです。
その膿によって歯の根っこあたりの歯肉がプクっと腫れ、場合によって痛みが出ます。
膿の発生によって歯を支えている骨がどんどん溶けてしまうので早めに治療することをお勧めします。
4.歯が割れていて腫れる場合
歯が割れると、その割れた部分に細菌が溜まりやすく腫れたりします。
ただ歯が割れているのは部位や角度によってレントゲンを撮ってもわからないことも多々有ります。
歯が割れていると抜歯しなければならないのですが、すぐに分からないこともあるため慎重に診査することが必要です。
5.ストレスや疲労で腫れる場合
ストレスや疲労で身体の抵抗力が低くなり、歯肉が腫れることがあります。
適正な歯ブラシはもちろん大切ですが、身体に疲れが溜まっているときはゆっくり休んで疲れを取ることも大切です。
歯肉が腫れていることに気づいたら?
歯肉が腫れるのはだいたいの場合は細菌が原因なので、一番効果的な対処法は歯科医院で診てもらい、クリーニングや消毒をして細菌を減らし、口腔内を清潔に保つことが大切です。
それから自宅でのブラッシングも大切です。
歯周病などで腫れている場合は歯肉から出血があったり、歯ブラシを当てると痛みが出たりする場合もあります。
しかしそれでブラッシングを止めてしまうと、どんどん歯肉は悪化していきます。
出血があった場合は、その血を出すことによって歯肉が良くなっていくので無理しない程度に磨くようにしてください。
歯ブラシを当てて痛みが出る場合も、柔らかい歯ブラシなどを使い、我慢できる程度でいいので、マッサージをするように優しい力でなるべく当てるようににしてください。
ただし、やりすぎは禁物です!
もし痛みが我慢できない場合や膿が出ている場合などで、歯科医院に行くまで、又はなかなか歯科医院に行けない時は、痛み止めや抗生物質を飲むと症状が落ち着くことが多いです。
しかし、これは治ったわけではなくあくまでも一時的に症状を抑えているだけなので、薬をやめてしまったらまた症状は出て来ます。一時的に症状を抑えるだけなので「解決」はできません。そのような状態になったら必ず歯医者に行ってください。
頼るべきは薬ではなく歯医者さんです。
親知らずや歯が割れている、根尖病巣がある場合はその原因自体を取り除かなければまた繰り返し腫れは出てきます。
消毒などで腫れや痛みが治まったとしても、その歯を抜くことも必要になってくる場合があります。
歯を抜く理由・原因にはさまざまな問題があります。
親知らずは特に必要がないものですが、それ以外は本当に抜かなければいけない歯なのか、しっかり先生と相談しながら進めていってください。
そして根尖病巣がある場合は神経の治療をもう一度する必要があります。
治療期間が少し長くなる治療ですが、治さなければ膿によって骨が溶け、歯が残せなくなる場合もあるのでしっかり治療を終わらせましょう。
そしてストレスや疲労で腫れた場合はしっかりと身体を休ませることも大切です。
食事で栄養を補給し、睡眠を取るようにしましょう。
歯肉が腫れないようにするには?
歯肉が腫れないようにするために大切なことは口腔内に細菌を残さないようにすることです。
そのために日々のブラッシングは意識して行うことが必要です。
毎日のことなので適当になりがちな人が多いですが、適当にブラシを動かしているだけではしっかり汚れを取ることができません。歯ブラシをブンブン振り回して腕の運動をしているのと同じです。
歯磨きするときはブラシの当てる位置や角度、動かし方に気をつけながらしっかり汚れを取るように磨き方に気をつけましょう。
最近は電動歯ブラシも良いものが出ていますのでそういったものも導入するのも効果的だと思います。
ただ電動歯ブラシは、動かし方は楽になるものの、当てる位置などは意識して気をつけないと汚れは落とせず意味がなくなってしまいます。
”高い電動歯ブラシを買ったからもう安心!”とはなりませんのでご注意を。
種類もたくさんあるので歯科医院に相談しながら使用してください。
ただ、正しい歯磨きができるなら電動歯ブラシは必要ありません。これは余談ですが、電動歯ブラシはもともと、手をうまく使えない人たちのために開発されたものなんです。
それから自宅でのケアだけだと、どうしても汚れの取り残しがあったり、歯ブラシでは取りきれない場合があったりと不十分になってしまいます。
痛みがない場合でも半年に1度くらいは歯科医院に行って検診を受けることが大切です。
そこでクリーニングをして歯肉のポケットの中、親知らずの部分など自分では取りきれない汚れを取ることができます。
歯肉の腫れなどは問題が出る前に予防していくことが大切です。
そして、もしなにかあった場合でも定期的に検診に通っていれば、進行する前に対処することができます。
進行してしまうと以前の状態に治らないことが多く、現状維持が一番になってしまうのでなるべく進行させないように気をつけましょう。
定期検診の際には食生活指導やブラッシング指導をしてくれるところが多いです。
ブラッシング指導をした後は意識して磨くと思いますが、だんだんと自己流に戻っていってしまうので、定期検診の度に正しい磨き方を思い出すようにしましょう。
歯肉の腫れを軽く見てはいけない
歯肉の腫れについての原因、対処法などは理解できたでしょうか?
腫れの原因はたくさんあって、自分ではなにが原因か分からないことが多いと思います。
あまり多くはありませんが、歯肉の腫れは口腔内にある癌が原因だったという症例もあるので、もしなにか気になることがある場合は歯科医院に相談するのが一番だと思います。
よく腫れる、血が出るという状況が続いていると深刻に考えなくなってしまうかもしれませんが、そのままにすると取り返しのつかないことにもなりかねないので歯肉の腫れを軽く見てはいけません。
また口腔内では問題がなくても、口呼吸をしている人や、身体の方で薬(血圧を下げる薬など)を飲んでいる方、または糖尿病や他の病気を持っている方などは歯肉が腫れる場合が多いです。
もし歯科医院で定期的にクリーニングをしていて、ブラッシングなども問題なくできていると言われても歯肉が腫れている場合は、そういうことも考えてみるといいかもしれません。
特に思い当たることがなく、試しに人間ドックなどに行ってみると問題が見つかる場合もありますので注意してみてください。
特に痛みがないからと放っておいてしまうと、後で治療期間が長くなってしまったり、メインテナンスが大変になってしまったりすることも多いです。
お口の中は自分で治すことができず、自然と良くなっていくこともないので放置しないようにしましょう。