なぜ歯医者は何回も行かなければならないのか
歯医者に行くとなかなか終わらない、何回も通わされる…
というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか?
虫歯で行ったのにクリーニングもさせられる。
1本の歯を治療しているのにもう1ヶ月以上経つ。
歯周病の治療って言われるけど毎回も同じようなことをしていて、しかも何をやっているのかよくわからない。
こういった経験をしたことはありませんか?
もちろんそれぞれの治療には意味があり、無駄に何回も通わせているわけではありません。
実際、保険診療の場合は回数を増やしてもあまり歯科医院にとってプラスになることはなく、むしろ赤字になってしまう場合もあるくらいなのです。
それでは、なぜ何回も通わなければならないのでしょうか?
それぞれの治療で具体的には何をやっているのでしょう?
今回はそのことについて説明していきたいと思います。
なぜ虫歯治療に行ったのにクリーニングをするのか?
虫歯を治す目的で歯科医院に行ったのに、痛みがないからと、先にクリーニングをされたことはありませんか?
または、治療が終わったのにクリーニングで来てくださいと言われることもあると思います。
なぜクリーニングをしなければいけないのでしょうか?
お口の中の汚れであるプラークや歯石は虫歯や歯周病の原因となります。
歯は骨の中に埋まっているもので、歯茎と骨に支えられています。
いわゆる、家でいう土台となる部分なわけです。
例えば、沼地に家を建てたら一瞬でダメになってしまうのは誰もが想像できますよね?
プラークなどがたくさんついていて、歯茎に炎症がある、歯周病になっているのに虫歯の治療するのは、簡単に言うとそれと同じことなのです。
また、プラークは細菌の塊です。
虫歯の部分を削って詰め物をする、被せ物をするときにプラークが入り込んでしまうと、その詰め物や被せ物の隙間から虫歯になってしまうということもありえます。
それから、歯茎が腫れたまま治療して被せ物をするとなると、腫れた歯茎の位置で被せ物をすることになってしまいます。
そうすることによって歯茎が引き締まったときや、加齢によって歯茎が下がってきたときに、被せ物で金属を使っていると金属の部分が見えてきてしまい審美面で問題が出てきてしまいます。
神経を取った歯は色がだんだん黒っぽくなってしまうことが多いのですが、それが見えてきて目立ってきたりすることもあります。
それなので特に治療後よりも、治療前にクリーニングをしてお口の状態を整えるのはとても理にかなっていて、いいことなのです。
歯周病治療はなにをやっているのか
あなたは歯周病治療を受けたことはありますか?
歯周病治療はクリーニングと似ているのですが、簡単に言うと2.3回のクリーニングでは汚れを落としきれないくらい歯周病が進行しているときに行います。
歯周病が進行してしまっている場合、歯茎の上の部分、見えているところはもちろん、歯と歯茎の間にあるポケットと言われる部分にもプラークや歯石がついてしまっていることがほとんどです。
それによって歯茎もだいぶ腫れている状態となります。
まず歯茎が腫れていると、正常な歯茎よりも触ったときに痛みが出やすくなります。
出血もたくさん出る場合が多く、そんな中、歯茎の中に機械や器具を入れて汚れを落とすのです。
ポケットの中の歯石はとても固くこびり付いていて、簡単に落とせるものではありません。
そして目に見えない部分なので手探りで歯石の位置や大きさを確認し、歯に沿って歯茎を傷つけないように歯石をとっていきます。
考えただけでも痛そうですよね?
それを勉強や訓練をした歯科医師や歯科衛生士がなるべく痛みが出ないように徐々に取っていくのです。
そのために一度に進められる部分が限られてしまい、一気に進めても患者さんがとても痛く大変な思いをしてしまいます。
また、歯茎は腫れている場合でも治りがとても早いです。
歯科医院でプラークや歯石を取った後、家でのブラッシングをしっかりやれば1週間くらいでも少し引き締まってきます。
ただし、喫煙者は歯茎の治りが遅いので、そこまで早い回復はみられずもう少し時間がかかってしまいます。
その治りをチェックしながら、お家でのブラッシングがしっかりできているのかを判断したり、歯茎が少しでも引き締まることによってポケットの奥についている歯石などがさらに取りやすくなるのでやる側も、やられる側も、両方にとって楽になります。
その治りを診ながら進めていくのも、時間がかかる理由でもあるのです。
歯石は自分では取ることができないので歯科医院で取ることになりますが、プラークは日々のブラッシングで落とせるものなので、自分での努力も大切です。
ブラッシングをしっかり行うことによって歯茎の治りが早くなると、治療期間が短くなる場合もあります。
自分のためにも頑張りましょう!
1本の歯の治療で1ヶ月以上かかるのはなぜなのか?
虫歯の治療で、削って詰め物を入れる治療は基本的に1本の歯に対して1、2回で終わらせることができます。
しかし、神経を取る治療となるとその何倍も時間がかかってしまうのです。
基本的な神経の治療は、まず歯を削って神経を取り除きます。
その後に神経入っていた通路を薬が詰められるようにきれいにしながら、その通路の長さを図り、薬を詰める準備をしていきます。
歯の状態も診ながら行い、ここまでの時点でだいたい少なくても2、3回の通院が必要になります。
その後に薬を詰め、歯の中の治療は終わりになり、今度は歯の外側に移っていきます。
虫歯が小さかったり、虫歯以外の理由で神経を取って歯の大部分が残っている場合は詰め物をして終わりになりますが、虫歯が大きく歯がほとんど残っていない場合、まず歯の土台を立てる必要があります。
型取りをして、その歯に合った土台を作ってから入れるのでそこで2回の通院が必要となります。
その土台をつけた後に被せ物の型をもう一度取り、それができてから最終的につけることになるので、短くても6回ほどの通院が必要となります。
歯科医院に行くのが週一回だとすると、1ヶ月半かかるということになります。
しかもこれは短い場合で、神経の治療中に痛みが取れないなどの問題があったり、虫歯で神経が死んでいるのをずっと放置していたり、以前神経の治療をしていたところが膿んでしまった場合などは更に時間がかかってしまい、治療期間が延びてしまいます。
特に虫歯でとても強い痛みがあった後に急に痛みがなくなったりすると中で神経が死んでしまった場合があります。
虫歯が自然に治ることはないので注意してください。
以前、神経を取った歯が噛んで痛かったり、歯茎がぷっくり腫れている場合は膿の袋ができている可能性があります。
それ以外でも、違和感があった場合などは早いうちに歯科医院に行くようにしましょう。
保険制度の関係
虫歯や歯周病はどうして治療期間が長くなるのか?
先ほどまで書いてきたように、治療の進行や治りを観ながら進めていくため、時間がかかってしまうことは分かっていただけたでしょうか?
それ以外にも、日本の保険制度の関係でも一気に進められない理由があります。
保険診療の場合、治療内容それぞれに点数が決まっていて、その点数によって金額も決められます。
そして支払いはその3割を患者さんが窓口で負担し、残りは国に請求されます。
国としては医療費の削減をしたいので、その時に治療を一気に進めて請求がほかの人よりも異常に高くなってくると歯科医院が行政指導を受けるのです。
患者さんのことを思うと早く進めたいけど、制度によって進められないという問題もあるのです。
点数が決まっている関係で保険診療をメインにやっている歯科医院では1日なるべく多くの患者さんを診なければいけません。
治療が長ければいいというものでもないですが、特に神経の治療などは歯科医院によっては適当に数回で終わらせて、後々問題が出てくるところもないわけではありません。
歯科医院を探すのは大変ですが、しっかり説明をしてくれて話を聞いてくれる、信頼できる先生の元で治療をしてもらいましょう。
そして回数がかかるのはしっかり治すためでもあるので、自分の今後のためにも最後まで通うようにしましょう。