歯の神経を抜くことになったら
虫歯だと思って歯医者に行って、「神経を抜きましょう」と言われたら、びっくりしますよね。
歯の神経を抜くのも、虫歯治療の一つなのですが、「神経を抜く」と言うだけで、とても大掛かりな治療のように感じられるのではないでしょうか?
この歯の神経を抜く治療を『抜髄(ばつずい)』と言います。
実際、この抜髄は、削って埋める、または詰め物をするといった、即日、もしくは2回ほどの通院で治る治療とは違います。
治療が完了するまでに、通院回数も5回以上かかってくることも多いです。
1本の歯を治すのに、5回以上も通院!?
ただでさえ、痛くて怖いイメージの歯医者なのに、そんなに行かないといけないを思うと、憂鬱になりますね。
しかし、風邪は放置していても、治ることはありますが、残念ながら、虫歯は放置していても、絶対に治ることはありません。
そして、放置すれば、悪化していくばかりです。
また神経を抜かないといけない程の歯を放置してしまい悪化すると、
最終的には、神経を抜くだけでは手の施しようがなく、結果、歯自体を抜くしかなくなってしまいます。
そうならないためにも、まず、どんな歯が神経を抜くことになるのか、
また神経を抜くとはどんな事かをお話ししていきますね。
神経を抜く方法
まず「神経を抜く」とは、どういう事でしょう?
歯はエナメル質、象牙質など様々な組織から成り立っていますが、
その一つ、歯の中心を神経が通っている組織があります。
それを歯髄と言います。
この歯髄は神経だけではなく、血管もあり、この血管を使って、歯に必要な栄養を送る働きをしています。
「神経を抜く」と言われますが、正しくは、この歯髄を取り除く事を指し、これを「抜髄(ばつずい)」と言います。
では、抜髄とはどのように治療するのでしょうか?
今までに抜髄を経験したことがある人であれば、こう思っている人も多いはずです。
「一回の治療時間は短いのに、何度も通院させられる」
「ちょっと触って蓋して終わり。本当に治療は進んでいるの?」
治療回数が多いことと、目に見えての治療の進捗具合が分かりづらい、この治療は、痛みが出てない場合は、途中で通院を止めてしまう人も多いです。
しかし、待ってください!
痛みが出ていないからと治療を中断することは、歯にとって危険です。
では中断しないために、どんな事をされているのかが分かれば、少しは進捗具合も分かると思いますので、簡単にですが治療法を説明します。
虫歯の場合、治療法としては、まず歯の虫歯部分を取り除きます。
抜髄する原因によっては、虫歯でない場合もありますがこの場合も歯髄に器具を入れるために、少しは歯を削る必要があります。
以下からは、虫歯以外が原因であっても同じです。
①歯の中を歯の中心を通っている歯髄と言われる部分を取り除き、消毒する
(根管治療と言います)
②空洞になった歯髄の部分に、専用の薬品を詰め、充填する
③歯の被せ物を出来るようにする為に、歯の土台を作る
④作った土台に被せ物をする
簡単に言うと以上の工程で、治療は行われます。
ただ、これは簡潔にまとめているだけで、
歯髄と言うのは、そう簡単には綺麗に消毒し、取り切ることはできませんので、
少しずつ、薬を交換して、消毒してというのを繰り返し行うことでしか、
方法がありません。
ですので、必然的に何度も通院することが必要となる治療になります。
歯の神経を抜かないといけないのは、どんな歯?
虫歯の治療と言えば、
削って詰める、
削って被せ物を被せる
で、おしまい!というイメージがあると思います。
では、それでは終わらない神経を抜く『抜髄』とは、他の虫歯治療と、
どう違うのでしょうか?
抜髄も虫歯治療のうちの一つなのですが
即日で治療が終わる虫歯治療とは異なり、治療回数が多くかかります。
これは、虫歯菌の侵食度合いによるものです。
エナメル質や象牙質だけが虫歯になっている場合は、
その虫歯になっている部分を削り、範囲が小さければ、
レジンと言われる樹脂で詰めるだけで、治療は終わります。
一日で終わることができる治療ですね。
また、少し削った範囲が大きい場合でも、金属の詰め物や被せ物を詰めれば
いい場合は、削って型取りして詰めてとなるので、2回は通院が必要になる
処置となります。
そして、抜髄は、虫歯菌がエナメル質や象牙質では留まらず、
神経まで到達してしまっていた場合、必要な治療です。
抜髄の場合は、削るだけで、虫歯を排除できるのではなく、神経の中を消毒
しながら取り除いていく必要があります。
1回の治療では、消毒し神経を取り切ることは難しく、回数がかかる治療です。
この点が、即日で終えれる虫歯治療との違いです。
他にも、強すぎる噛み合わせや知覚過敏により、
歯髄に炎症が起こってしまい治らない場合の処置として、
抜髄を行う場合もあります。
よって抜髄をしないといけない歯とは、
虫歯が神経まで到達してしまっている歯や
噛み合わせや知覚過敏による歯髄の炎症を起こしている歯です。
しかし、どちらも激しい痛みがあるとは限りません。
自覚症状はないのに、抜髄の必要があることもあります。
しかし、これは「現時点で」痛みが出ていないだけで、
歯としては間違いなくダメージを受けている状態なので、放置しておくと、
痛みに襲われることになります。
そして、その時には神経が腐敗してしまっていて、膿んでしまっている事も
あり、ただ抜髄するよりも、痛みを伴ったり、消毒に時間がかかることが
あります。
何より神経が腐敗し膿が溜まってしまった場合は、
歯を支えている骨にも、影響が出てきてしまいます。
こういった点からも、神経が腐敗してしまう前に、
抜髄し、それ以上悪化しないようにする必要があります。
歯の中で起こっていることは、目で見えないので分かりづらいものですが、
痛くないから大丈夫と自己判断しないようにしましょう。
歯の神経、抜いた方がいい?抜かない方がいい?
歯医者で先生に
「歯の神経を抜きましょう」
と言われると、「抜く」という言葉だけに少し躊躇してしいますよね。
ここでは、
歯の神経を抜いた方がいいのか?残しておくべきなのか?
をお伝えしたいと思います。
「神経を抜く」と言うくらいですから、当然、歯の感覚も無くなります。
感覚がなくなるという事は
痛みや、冷たいものがしみるという事も感じなくなります。
こう聞くと、良い事な気がしますよね。
しかし、感覚がないという事は、温度を感じたりする事も出来ません。
幸い、人は1本ずつの歯から温度を正確に感じ取って食事をしているわけではないので、
1本の歯が温度を感じないからと言って、食事がおいしくなくなるということはないでしょう。
だけど、もし沢山の歯の神経を抜いてしまっている場合は、
食事の微妙な温度も感じられず、味気ない食事になってしまうかもしれません。
また、抜髄した歯(神経を抜いた歯)というのは、
木で言えば幹の中を水が通っていない状態になってしまいます。
そうすると、木は、スカスカになり、枯れてしまいますよね。
歯でも同じことが言えます。
どうしても、歯自体がスカスカになり脆くなってしまうのです。
噛み合わせなどの強すぎる力で、歯の根っこに負担がかかり、
歯が折れてしまうなんてことがあるのですが、その場合も、痛みを感じることがないので、
気づいた時には「折れてしまっていた」なんてことにも、なりかねません。
ですので、歯の神経は出来るだけ、抜かずに保っておいた方がいいのです。
しかし、健康な歯であれば、間違いなく神経は抜かない方が良いですが、
既に虫歯になっていたり、噛み合わせや知覚過敏などの原因で、
抜髄が必要と診断された場合は、神経を抜いた方が良いです。
では、抜髄の必要な歯を抜髄せず放置した場合、どんな事が起こるでしょうか?
まず、もし痛みが出ていない状態だった歯だとしても、
突然、激しい痛みが出る可能性があります。
また、歯髄が感染し、膿が溜まってしまうこともあり、
この場合、膿が歯を支えている骨にまで、影響を及ぼす可能性が出てきます。
そして、激しい痛みが出てしまっている状態の時には、麻酔が効き辛いため、
痛みを我慢しながら、治療しないといけない場合があります。
痛みが出ていないと、どうしても
「本当に治療しないといけないの?」
「痛くなってからでいいや」
と思ってしまいがちですが、そうなった時には、
治療することが、より困難になり、更には余計に治療回数が増えてしまいます。
また、抜髄が必要と診断された歯を放置すると、最悪の場合、
神経だけではなく、歯を抜かないといけなくなることもあります。
歯の神経は、とても大切です。
健康な状態の神経であれば、絶対に抜かない方が良いものです。
しかし、虫歯になっていたり、強い炎症を起こして、
抜髄が必要と診断された場合には、きちんと抜髄してもらう方が、歯のためにも良いことです。
痛みがあるか無しかではなく、先生の診断に合わせて一日でも早く治療しましょう。
神経を抜くのは、良いこと?
「神経を抜く」と歯医者さんに言われたら、不安な気持ちになりますよね。
痛いのかな?
抜いたら、どうなるのかな?
などなど。。。
しかし、歯医者さんも、何でもかんでも抜いてしまいたいわけではありません。
- 虫歯が深く、神経にまで到達してしまっている
- 強すぎる噛み合わせにより、神経が炎症を起こしてしまっている
- 知覚過敏により神経が炎症を起こしてしまっている
このような場合に神経を抜くという診断を下されます。
神経は、抜かないで良いものであれば、抜かないに越したことはありません。
噛み合わせや知覚過敏での場合は、経過観察で様子を見て悪化しなければ、
神経を抜かない場合もあります。
しかし、虫歯の場合は経過観察をしても虫歯は進行してしまうだけなので、
神経を抜くことをお勧めします。
神経を抜くと、歯が脆くなってしまうというデメリットはあります。
神経を抜く必要のある歯を放置しておくと、突然激しい痛みが出ることがあります。
また神経が感染してしまい、膿が出て歯を支える骨にまで影響を及ぼす可能性があります。
こうなると最悪の場合、歯自体を抜かないといけなくなってしまうかもしれません。
「神経を抜く」という治療は、通院回数もかかり厄介だなと感じるかもしれませんが、
少しでも良い状態で自分の歯を残すためにも、早めにしっかりと治療されることをお勧めします。